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西谷祥子『飛んでゆく雲』

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今年の大河ドラマは「平清盛」私は見たり見なかったりですが‥‥
平清盛の時代を扱った懐かしの少女マンガを紹介します。
西谷祥子『飛んでゆく雲』
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1971年、別冊セブンティーン2月号と3月号に、
前・後編100ページずつ載った作品。

私は3月号を買って後編を読んで、その世界に魅了され、
1973年1月に出た単行本を買いました。250円と表示されています。

西谷祥子といえば、オシャレな学園モノ、西洋モノといったイメージですが、
日本の古典的な時代を描いても華麗で素敵です。

このマンガ、時代考証などしっかりしていて、
登場人物など、どこまで実在したのか、
原作があるのかどうかわからないのですが、
今読んでも、複雑なこの時代のこと、勉強になります。

以下、ネタバレを含みます。
画像は私が持っている単行本からスキャンしました。


源氏と平氏の説明、そして保元の乱についての説明から始まります。
保元の乱は源氏、平氏それぞれの身内が、
崇徳上皇方と後白河天皇方に別れて戦いました。
勝った後白河天皇方についた平氏の頭領・平清盛は、
崇徳上皇方についた叔父・平忠正の首を自らはねると言います。
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この作品が描かれた頃、平清盛はふてぶてしい悪人というイメージでした。

平忠正の首がとんだ
それは同時に 義朝をして 父為義に みずから刃をくだせと
せまる 火の手に ほかならなかった

義朝は ‥‥切った さらに院令はようしゃなく 為義の
幼い子どもたちにまで およんだ 義朝の弟たちである

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この場面、衝撃でした。なんてむごい!いくら院の命令だからといって!
‥‥戦争においては殺さなければ自分が殺される、また上官の命令は絶対で、
  先の第二次世界大戦でもこんな凄惨な事例も多々あったと聞きます。
  義朝にも他に選択の道がなかったと同情する点もあるかもしれませんが、
  後の頼朝の木曽義仲や義経に対するしうちとか、どうも私、
  源氏にあまりいいイメージがないんですが‥‥

父や兄弟をうってまで朝廷につかえたのに、
平氏に比べて格段に低い扱いに不平をためる源氏の頭領・源義朝

義朝の長子
鎌倉義平
16歳の初陣にて 叔父 帯刀先生善賢(たてわきせんのしょうよしかた)
(木曽義仲の父)を滅ぼし、あまりの剛強さから
悪源太(あくげんた)とあだ名された

13の年に 祖父のもとにあずけられてより鎌倉に住む。
この年18歳


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道泰(みちやす)は義平に使える家来

義平は朝まいりの姫を見かけて以来、
姫のあとをつけずにはいられないようになった。

姫は国司・相模太郎芳房(さがみたろう よしふさ)の姫で真柴
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実は真柴も義平のことを憎からず思っていることがわかるが、
京の中納言家にあがることが決まっていると義平との仲を拒絶される。

義平と道泰は強引に真柴姫をさらってきて二人は結ばれる。

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山奥の寺にこもり、二人の子が生まれるのを待つしあわせな一時。

だが、平治の乱がおこり、義平は京へ。
熊野詣での平清盛を待ち伏せしようという義平の提案も藤原信頼に一蹴され、
朝敵とされて平氏と戦う義平

戦況が不利なことを悟った義平は、道泰に「帰れ!真柴の子を守ってくれ」と
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やがて義平は捕らえられて斬首 20歳であった。

真柴は義平の後を追って死のうとするが、道泰の必死の説得で男の子を産む。
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真柴は吾子に「生きて天寿をまっとうしておくれ」と天寿丸と名付ける。

すぐに真柴の父は天寿丸を殺そうとするが、道泰が抱いて逃げ、寺へ預ける。

追っ手の目をくらますためにさらに逃げた道泰は深手を負ったところを
流れ踊りの一団に助けられる。

その一座の踊り子・紅萩は道泰に好意を寄せる。
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この紅萩、可愛くてたくましくて、すごく素敵なキャラクターです。
この作品が描かれた当時、女はおとなしくしていて男に守ってもらうのが
いい女みたいなイメージがあったんですが、紅萩の
「そなたひとりくらい この紅萩がたべさせてやる」ってセリフ、
かっこいいなぁって。

ある日、紅萩が平氏の武士どもにからまれ、はずみで道泰は一人を殺してしまい、
騒ぎの中、道泰は紅萩を連れて逃げる。
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天寿丸を預かった寺の住職・道心は、大和の式部大輔と相談し、
紀の国の豪族・落合三郎左衛門長綱に託す。

長綱は「源氏にも平氏にもかかわりたくない」
「かくべつに源氏の子として育てはせぬがいいか?」と引き受ける。

源氏再興という望みを持つようになった道泰と、
紅萩の間には梧桐丸(ごどうまる)という男の子が産まれる。
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勧められて京で白拍子になった紅萩に、
平清盛の娘が正室になっている六条の摂政・基実が懸想して
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道泰と赤子を襲い、強引に紅萩をものにしようとするが、
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紅萩は舌をかんで死ぬ。
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死ぬほどの深手を負った道泰だったが、奇跡的に助けられ
紅萩の死を知って、平氏の力をかさにきた極道公家め!と
平氏への恨みを深くする。

さて、紀の国に預けられた天寿丸は、5歳で元服し、次郎綱盛となり、
兄の少掾綱行(しょうじょうつなゆき)の一女・美稲(うましね)、
二女・紅子(こうこ)と共に、いつくしまれて仲良く育つ。
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二女の紅子は、女として望まれない出生であったことから、
みずから鬼姫と名乗り、馬術や弓、剣の稽古をしている。

道泰と梧桐丸はかげながら綱盛を見守っている。

梧桐丸は山で一人剣の稽古をする紅子を見かけて相手をするようになる。

やがて‥‥梧桐丸16歳、紅子14歳
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このシーン、当時胸をドキドキさせながら読みました。
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「下郎!」って紅子のセリフも、
「一生つきまとおうと おれはこの心 つらぬいてみせる!」って言う
梧桐丸も、すっごく憧れました。考えたら、これって「ベルばら」の
オスカルとアンドレの関係にも似てますね。
(この作品の方が「ベルばら」より先ですが)

綱盛の兄・綱行は平氏の一族に落合家もつながろうと、
清盛の弟・教盛(のりもり)の第2子・平教経(のりつね)を家に連れてくる。
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平教経は美稲を見て一目で気に入る。

綱盛が源氏の嫡流の子であることを知っている養父・落合三郎左衛門長綱は
落合家が平家に加わるのを大反対するが、すでに病床にある。

そのうちに、以仁王の令旨が発せられ、
各地で平氏に不満を持つ者たちが旗揚げする。

綱盛が源氏の嫡流の子であることを知る大和の式部大輔は鹿ケ谷の陰謀に加わって
蟄居させられ、病床にあったが、うわごとで綱盛のことをしゃべってしまう。

平教経が確かめに落合の館へ来る。病床の長綱は美稲と紅子を枕元に呼び、
綱盛が源義平の子であることを告げて自害する。

そこへ入ってきた平教経。美稲に向かって「わたしの‥‥妻になれ」と。
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なぜ美稲が自分のもとを去ったのかわからない綱盛。
何も知らないまま、平氏の軍に混じっているところに、
梧桐丸が綱盛が源氏の嫡流の子であることを告げて、旗揚げを勧めるが、
綱盛は驚き、悩み、迷う。
紅子はどこまでも綱盛と共に――と。
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やがて平氏は滅亡へと向かう。
平教経は美稲に綱盛のもとへ帰れと言うが‥‥
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平教経、すごく優しくカッコ良く描かれています。

こんな大河ドラマ一年分のような物語が、わずか単行本1冊、200ページ!
なので、かなり文字が多いし、単行本の大きさでも絵や文字が見づらいところも
あるんですが‥‥昔のマンガって1ページのコマ数も多かったですよね。

私の大好きな懐かしの少女マンガです。
もし本が手に入るようでしたら、ぜひ読んでみてください。


飛んでゆく雲 (集英社漫画文庫)

飛んでゆく雲 (集英社漫画文庫)

  • 作者: 西谷 祥子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1976/11
  • メディア: 文庫


‥‥うーん、文庫のサイズだとちょっと読むのツライかも?

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