7月3日(日)、岐阜県現代陶芸美術館が主催する
魅力発信事業 講演会
「モダンデザインの時代から始まった、デザインに対する誤解」
講師: 佐藤卓 氏 へ行ってきました。
岐阜県現代陶芸美術館のウェブサイトで、この講演会のことを知り、
ちょうど日曜日でパートは休みだし、
‥‥「ロッテ キシリトールガム」や「明治おいしい牛乳」などの商品デザイン、
「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、
「金沢21世紀美術館」、「国立科学博物館」、「全国高校野球選手権大会」等の
シンボルマークを手掛ける。
また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、
「デザインあ」の総合指導、21_21 DESIGN SIGHT ディレクターを務めるなど
多岐にわたって活動。‥‥
という佐藤卓氏の経歴を知り、
もう40年近く前(!)のことになるんですが、実は私は
美大でグラフィックデザインを専攻していたんですよね。
今はデザイン業界からは離れてしまっていて、
佐藤卓氏のこともあまり知らなかったんですが、
面白そうな演題だなぁと、メールで参加申し込みをしたんです。
会場は「とうしん学びの丘 エール」
岐阜県現代陶芸美術館のあるセラミックパークMINOではないので
注意してくださいと、メールの返信にありました。
14時からってことで、多治見のモザイクタイルミュージアムを見て
iPhoneのナビでは20分ちょっとと出たのですが、
初めて行くところだし‥‥と、12時半くらいに出たら、1時前に着きました、
さすがにちょっと早いかな?と、ぐるりと車で回りましたが、
1時過ぎに、まぁ早いのはいいだろうと。
新しくてなかなかカッコイイ建物です。
ガウディを思わせるような塀に使われているのはモザイクタイル?
時間を持て余すかと思ったら、施設内に
「とうしん美濃陶芸美術館」という展示スペースがあって、
そこで人間国宝(国重要無形文化財保持者)の荒川豊蔵、
鈴木藏、加藤卓男、加藤孝造の抹茶茶碗や、
美濃陶芸作品永年保存事業選定作品の展示がありました。
(チラシでは会期が7月5日(火)~ってなってますが)
人間国宝の抹茶茶碗の良さって私にはよくわかりませんが、
美濃陶芸作品永年保存事業選定作品は、なかなか斬新な陶器たちで
面白かったです。
最初に展示されていた平成12年度選定の
所貞治《Mの奏でるメロディ》が気に入りました。
さて、新しくてキレイな講義室で行われた講演会
私くらいの年齢から若い方まで、300名の定員でしたが
席はそこそこうまってましたね。
佐藤卓氏のお話、とても面白かったです。
「モダンデザインの時代から始まった、デザインに対する誤解。」
佐藤卓氏の言われるデザインに対する誤解、
まさに今まで私がデザインに対して持っていた認識でした!
(以下、私が聞いたことなので、聞き間違い等あるかもしれませんが)
私、大学で、一応、モリスのアーツ・アンド・クラフツから
アール・ヌーヴォー、アール・デコ、バウハウスについて学びましたが、
デザインってのは、カッコイイもの、洗練されたもの、シンプルなもの、
オシャレとかカワイイものを作ることって思ってました。
でも、そんなモダンデザインの概念が入ってくる前にデザインはなかったのか?
縄文土器は、モダンデザインの使いやすいとか、シンプルって観点から見ると、
正反対ともいえる、倒れやすくて使いにくそうだし、
独自の装飾的な形をしています。
岡本太郎が縄文土器の美を見出して、すごく迫力があって素晴らしいと。
デザインが経済に組み込まれていって、
デザインが「売るため」のものになっていってしまったと。
日本の図書館で使われている「日本十進分類法」では、
デザインは芸術の中の美術の端っこに、
デザイン、装飾美術として分類されている。
‥‥確かに、図書館で本を探す時、芸術の棚を探します
昔、デザイン科は「図案科」って言われていた時代があったけど、
デザインは「飾り」って認識されているのではないかと。
‥‥私はデザインのグラフィック専攻だったので、まさに
そんなカンジで、いかに表面をカッコよくするか考えていました。
佐藤卓氏は、デザインってのはもっと根本的なこと、
仕組みを考えることであり、全てのモノにはデザインがあり、
デザインとかかわりのないものはないと。
例えば、社会の仕組みを考えること、政治の仕組みを考えること、
そんなことも全て「デザイン」ではないのかと。
そんなデザイン概念の話から始まり、
佐藤卓氏の今までの仕事が紹介されました。
「明治おいしい牛乳」のパッケージデザインでは、
まず自分の中にある多くの人と共有する部分に注目をした。
冷蔵庫の中で牛乳がどうあってほしいか‥‥普通であってほしい。
クライアントからよく「目立つパッケージ」を要求されるけど、
「目立つ」というのはあくまでも相対的なもので、
周囲がカラフルならば逆にモノクロが目立つように
絶対的に目立つものはないと。
日本語の文字の豊かさ(漢字、ひらがな、カタカナ、アルファベット)
縦組、横組みができる‥‥を活かしたいと。
英語を使えばカッコイイって風潮に逆らいたかった。
でも佐藤卓氏は「これしかありません!」という提案はしないそう。
あくまでも複数案出して、クライアントと一緒に考えて作っていくと。
「ロッテ キシリトールガム」では、歯にいいガムということで、
デンタルのデザインをイメージした。
デザインは、新しいイメージを創るものって思われているかもしれないが、
実は世の中に新しいコトなどほとんど無くて、
あるモノをどうやってつなげるか。
「付加価値」という言葉は使わない。
価値は付け足すものではなく、見出すもの。
そこにもう価値はあるので、それを引き出す。
金沢21世紀美術館のシンボルマークのデザインでは、
特徴ある建物の図面を見た時に、
あ、ここにマークがある! と思ったそう。
いわゆる「21世紀」らしい未来的なシンボルマークを
新たに作って付けるってのはもう20世紀の発想だと思ったと。
図面をシンボルマークにすることで、
建築と案内サインとシンボルマークが一つになった。
「デザインの解剖」展のこと、Eテレの「にほんごであそぼ」
「WATER」展、「デザインあ」、「※(コメ)展」、
「ほしいも学校」‥‥いろんなプロジェクトのことについて
興味深いお話が聞けました。展覧会おもしろそうですね。
会場が東京だから、見に行けそうになくて残念だなぁ。
最後に質疑応答で、デザイナーの方からの質問に答えて、
企業とのかかわりについて、自分は商品化のみという仕事はしない。
商品をデザインしてそれで終わりではない。
完成したモノはない。デザインは長く続けて育てていくもの。
目的を最終形態にしない。と。
シンボルマークを作ってくださいって依頼には、
なぜシンボルマークが必用なのか?
シンボルマークに何を求めるか? ってことを
クライアントと話し合って考えていく
って話されていたのには、
あ、そこから! と、目からウロコの思いでした。
‥‥以上、簡単なメモはしたんですが、文章にするのは難しいですね。
間違っているかもしれませんのでご了承ください。
講演会後も、若い方に囲まれて質問に答えていらっしゃいました。
佐藤卓氏が縄文人のことを聞かれて推薦された本
小林達雄「縄文の思考」
図書館で探してみよう(私はケチなので買いません(^∇^;>
佐藤卓氏の本

デザインの解剖〈1〉ロッテ・キシリトールガム (デザインの解剖 1)
- 作者: 佐藤 卓
- 出版社/メーカー: 美術出版社
- 発売日: 2001/08/16
- メディア: 単行本